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です。
北太平洋ではこの十数年の間、風速、波高の増加傾向にあり、今後、ADEOS衛星などのマイクロ波散乱計で直接計測された海上風速などを用いてより確かな海象条件が得られることを期待するとともに、「みらい」自身もシミュレーション結果や衛星データの検証という役割を果たしていかなければならないと思います。
4. 観測機器のハンドリング
さて、シーステート5でのCTD採水が実際にできる見込みがあるのかというと、実はあまり根拠はありません。ただ、このH標目指して使える手段はすべて使うというだけです。
いくら船が大きくなっても波が静かになるわけではないし、舷外に吊り降ろす観測機器が特別丈大なわけでもありません。また、「みらい」は横揺れ固有周期が12〜17秒で同調横揺れしにくい船ですが、ピッチング(縦揺れ)については「なつしま」や「よこすか」よりも大きい場合もあり、実際に乗ってみれば、半没水型双胴船である「かいよう」に比べればよく揺れると忠われるでしょう。ただ「かいよう」には荒天になると連結部の底面に波がぶつかる欠点があります。
現在、狙ってるのは、まず横揺れをもっと減らすために新開発のハイブリッド減揺装置を採用し、ピッチングが少なくなる「横波中」で観測機器を吊り下げようというものです。横波中では大きな乾舷によって観測甲板への海水打ち込みはまずありませんが、海面まで遠くなったため、船尾Aフレームクレーン及び右舷ギャロースのアウトリーチを十分大きくし、副フレームとキャッチャーを設けて機器の危険な揺れをなるべく押さえることとしています(図一4)。

 

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図−4 「みらい」の船尾Aフレームクレーン

 

さらにピッチングの影響が大きい船尾Aフレームクレーンではアクティブ型のスエルコンペンセータにより観測機器に伝わる船体動揺を1/3程度にまで減らします。
そして、横波状態を保つためにジョイスティック操船システムを採用します。「みらい」が横風中でどの程度まで定点保持できるかというと、水槽試験では11m毎秒までは保持できていますが18m毎秒では流されています。さきに述べたようにシーステート5では風速14〜17m毎秒の風が想定されるため、風を左舷がら受けることによって右舷側に作った静穏海面に観測機器を吊り下げることができるかは微妙なところです。
もしシーステート5を超えても、船体固定の観測設備、すなわち、人気ガス採取装置、表層海水連続分析装置、ドップラープロファイラ(ADCP)、海洋レーザー、ドップラーレーダ、シービーム2100(マルチナロービーム音響測深機、サイドスキャンソーナー、サブボトムプロファイラ)、船上重力計、船上三成分磁力計などによる計測は続行可能です。これら船体固定機器による観測がどこまで可能かについても、海上試運車慣熟運転での結果待ちとなります。
5. 氷海域
一方、今度は氷海の方に目を向けると、「みらい」の耐氷構造は船級協会規則のクラスIAです。これは耐氷構造の最高クラスのIA superに次ぐものです。どこが違うかというとIA superは設計氷厚が1mなのに対してIAはO.8mとなっています。それに相応して機関馬力、アイスベルト(耐氷帯)の増厚範囲、舵、プロペラ強度など様々な簡所で違っています。
「みらい」には幅2.4m、厚さ21〜23mmのアイスベルトが設けられており、その船体前部では肋骨が倍ピッチで入っていて、船首材には厚さ24mmの高張力鋼が使われています。
「みらい」の設計水厚が0.8mだからといって0.8mの「砕氷」能力があるというわけではありません。一般に強固な水盤を割って航行可能な開水面を作り出すには、鋭利な船首で切り裂くというより、氷盤に曲げ応力を加えて割る必要があります。つまり氷盤の上(又は下)に船首をのし上げ(下げ)させて、その重み(浮力)で割るわけです。
このため、一般に砕氷船はどんぶりのような丸みのある船体をトリムタンクの注排水で揺さぶることで砕氷し

 

 

 

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